監督・脚本:ノラ・フィングシャイト   撮影:ユヌス・ロイ・イメール   音楽:ジョン・ギュルトラー
出演:ヘレナ・ツェンゲル、アルブレヒト・シュッフ、リザ・ハーグマイスター、ガブリエラ=マリア・シュマイデ
原題:Systemsprenger 英題:System Crasher  日本語字幕:上條葉月  後援:ゲーテ・インスティトゥート東京
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション  配給:クレプスキュール フィルム
[2019年/ドイツ/ドイツ語/カラー/119分]

© 2019 kineo Filmproduktion Peter Hartwig, Weydemann Bros. GmbH, Oma Inge Film UG (haftungsbeschränkt), ZDF

■受賞37部門 
ベルリン国際映画祭2019 銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)&ベルリン・モルゲンポスト紙審査員賞/バーデン・バーデンテレビ映画祭2019 最優秀作品賞/バイエルン映画賞2020 最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞、音響賞/エムデン国際映画祭2019 最優秀作品賞/ヨーロッパ映画賞アカデミー賞2019 最優秀作曲賞/モロディスト・キエフ国際映画祭2019 審査員賞/サンパウロ国際映画祭2019 最優秀映画賞/台北映画祭2019 最優秀作品賞、台湾映画批評家協会賞/シュヴェリーン・アート オブ フィルム・フェスティバル2019 最優秀音響音楽賞/サンパウロ国際映画祭2019 最優秀映画賞/トランシルバニア国際映画祭2019 観客賞/チューリッヒ映画祭2019 最優秀映画賞/レザルクヨーロッパ映画祭2019 最優秀長編映画賞、若手審査員賞特別賞/ギュンター・ロールバッハ映画賞2019 最優秀映画賞、主演男優賞、編集賞/ヴコヴァル映画祭2019 最優秀映画賞/トランスアトランティク映画祭2019「ニューシネマ」賞/サンティアゴ国際映画祭2019 主演女優賞/ノーザン映画祭2019 最優秀映画賞/オスロピクス映画祭2019 最優秀国際映画賞/ドイツ映画賞2020 最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞、音響賞/パームスプリングス国際映画祭2020 最優秀女優賞/ロミー・ガラ、オーストリア国際映画祭2020最優秀監督賞/ドイツ新人賞2020 新人監督賞、新人俳優特別賞 /カミーユ賞2021 最優秀作曲家賞

■ノミネート26部門
ベルリン国際映画祭2019 金熊賞/アカデミー賞2000 国際長編映画賞ドイツ代表/ベルリン国際映画祭2019 最優秀デビュー作品賞/ヨーロッパ映画賞2019 主演女優賞/ヒホン国際映画祭2019 最優秀作品賞/エルサレム映画祭2019 国際批評家連盟賞/リュブリャナ国際映画祭2019 最優秀作品賞/モロディスト・キエフ国際映画祭2019 最優秀作品賞/フィルム・バイ・ザ・シー国際映画祭2019 最優秀映画賞/トランシルバニア国際映画祭2019 監督賞/チョンジュ国際映画祭2019 グランプリ/ムンバイ映画祭2019 ゴールデンゲートウェイ賞/レザルクヨーロッパ映画祭2019 クリスタルアロー賞/グアナファト国際映画祭2019 最優秀映画賞/ジェイムソン・シネフェスト – ミシュコルツ国際映画祭2019 最優秀長編映画賞/サンティアゴ国際映画祭2019 審査員賞/ジュピター賞2020 最優秀ドイツ女優賞 /パームスプリングス国際映画祭2020 最優秀外国語映画賞/ドイツ映画2020 助演女優賞(ビアンカ役)、音楽賞/ロミー・ガラ、オーストリア国際映画祭2020 撮影賞/ドイツ映画批評家協会賞2020 映画批評家賞、最優秀女優賞、最優秀男優賞/グアラニ賞2021 最優秀外国映画賞

ただママと一緒にいたいだけ ――
intro

嵐のような9歳の女の子ベニー。幼少期、父親から受けた暴力的トラウマ(赤ん坊の時に、おむつを顔に押し付けられた)を十字架のように背負い手の付けようのない暴れん坊になる。里親、グループホーム、特別支援学校、どこに行こうと追い出されてしまう、ベニーの願いはただひとつ。かけがえのない愛、安心できる場所、そう!ただママのもとに帰りたいと願うだけ。居場所がなくなり、解決策もなくなったところに、非暴力トレーナーのミヒャはある提案をする。ベニーを森の中深くの山小屋に連れて行き、3週間の隔離療法を受けさせること…。

ケアホームからケアホームへ、里親から里親へ、「システム・クラッシャー」とは、あまりに乱暴で行く先々で問題を起こし、施設を転々とする制御不能で攻撃的な子供のこと。監督・脚本は、本作が長編デビュー作となるドイツ出身のノラ・フィングシャイト。ホームレスを描いたドキュメンタリーの撮影中、そこで「システム・クラッシャー」と呼ばれる子供がいることを知ったことから映画化。その強烈な演出により第69回べルリン国際映画祭銀熊賞とモルゲンポスト紙審査員賞の2冠を受賞。ドイツ映画賞では作品賞、監督賞、脚本賞、俳優賞、女優賞を含む8部門を獲得、世界各国で37冠(26ノミネート)に輝く。ベニー役にはへレナ・ツェンゲル。全身全霊の演技で力演、ドイツ映画賞主演女優賞を歴代最年少で受賞。

福祉制度が整っている国でも、そこからこぼれ落ちてしまう子供は少なからずいる。システムの仕組みから外れた破壊者は社会から排除するしかないのか?福祉制度が整っている国でも、そこからこぼれ落ちてしまう子供は少なからずいる。世界には怒りの感情を抑えられない多くのベニーがいる。本作は、どんなに脚色されていても、決して想像上の産物ではない。甘ったるさや教訓めいたものは語らず、観客の共感を1ミリも必要とせず描き切る。ベニーは可愛らしく素敵な女の子であると同時に、錆びた鍵がついた手榴弾だ。観たからには一生忘れられない魂の映画、この強烈なストレートパンチは長い間あなたの心に残るだろう。

どこにも居場所のない9歳のベニーは吠え、吠え、吠え続ける。可愛くて、狂暴で、優しくて、切ない…
ぶち切れるのは愛の不足の裏返し、ただママに愛されたい少女の怒りと悲しみの物語。
story

いつもピンクのトップスを着込んだベニーは、9歳のどこにでもいる普通の女の子。だけど、怒りの感情にいったん火がつくと、あたり構わず暴力をふるい手がつけられなくなる問題児。里親の家庭、グループホーム、特別支援学校、トラブルを起こしては新たな保護施設へとたらい回し。学校にも行かず、街をぶらついては毎日を過ごす。そんなベニーは、顔を触られることが大嫌い。ママ以外、誰にも顔を触らせない。赤ちゃんの頃、顔にオムツを押し付けられたことがトラウマとなって、感情をコントロールできないほどのパニック発作を起こすから。

友達がいないベニーにとって、心を許して話せる相手はママ、そして社会福祉課のマリア・バファネの二人だけ。特にバファネは、ベニーがトラブルを起こすたびに受け入れてくれる施設探しに奔走し、ママ以上にベニーの将来を案じてくれる頼もしい存在だ。そんな彼女が、ベニーの新しい通学付添え人、ミヒャを見つけてきた。彼の役目は文字通り、ベニーの通学に付き添うこと。だがベニーは学校へ行く気などさらさらない。挙句、「学校に行きたくない」とグループホームで包丁を振り回しては、駆け付けた救急隊に鎮静剤を打たれ、病院へと連れていかれる始末。

閉鎖病棟へ入れてしまうか、精神病院に入院させるか。それとも海外の集中体験プログラムに参加させるか。バファネやグループホームの職員たちは会議で頭を抱え、ベニーの扱いに結論を出せずにいた。そんな中、ミヒャが口を開く。「森で3週間、1対1で世話をする。水も電気もない、あの子にはいい環境だ」。そして、二人の森の中での生活が始まった。最初は掃除も、ベッドメイクも、水汲みも「やる気なし」と素っ気なかったベニー。しかし、ときに厳しく、本気で接してくれるミヒャにベニーは心を開いていく…。

comm

少女はネオンピンクの火薬庫!起爆剤!!
──── ZEIT ONLINE

この映画は決して暗いものではない。ダルデンヌ兄弟(『少年と自転車』)やグザヴィエ・ドラン監督の『Mommy/マミー』を彷彿とさせる傑作だ。良い意味でも悪い意味でも飼い慣らすことのできないエネルギーの塊。

──── APOKALYPSE FILM

『システム・クラッシャー』は何もごまかさず、簡単な答えも提示せず、痛いところをついてくる。ノラ・フィングシャイトの長編デビュー作は無味乾燥の問題作とは異なり、紛れもない傑作だ。そして全ての観客は自分の無力さを感じるだろう。

──── EPD FILM

これは演技ではなく、実際に起こっていることなのだと奇妙な感覚を覚えることがある。悲惨で手に汗握る作品だ。ヘレナの演技がきっと何日も忘れられなくなるだろう。

──── ABUSDECINE.COM

痛ましいけれど面白くて心温まるこの映画は、自分がどのシステムの一部でないと感じたことのある人なら誰でも心に響くはずだ。

──── CRITIC.DE

staff

監督・脚本:ノラ・フィングシャイト
Nora Fingscheidt

1983年ドイツ、ブラウンシュヴァイク生まれ。2008年から2017年まで、バーデン=ヴュルテンベルク・フィルム・アカデミーで舞台美術を学んだ。2014年、シュトゥットガルトのホームレスの女性についてのドキュメンタリー『Das Haus neben den Gleisen/線路の隣の家』で、撮影時に出会った14歳の女性が「システム・クラッシャー」として保護施設に拒否された事件が本作製作のきっかけとなる。2017年には、アルゼンチンのメノナイトの生活を描いた卒業制作ドキュメンタリー『Without This World (Ohne diese Welt)』でブラウンシュヴァイク国際映画祭最優秀作品賞を受賞。2019年、本作は第69回ベルリン
国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)とベルリン・モルゲンポスト紙の読者審査員賞を受賞。翌年のドイツ映画賞では最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、俳優賞、女優賞を含む計8部門を受賞し、アカデミー賞長編国際映画賞ドイツ代表作品として選出された。2021年に、Netflix映画『消えない罪』を監督。オスカー女優サンドラ・ブロックを主演に迎え、重い罪を背負って生きる元受刑者を描き、大きな話題を呼んだ。2023年には、シアーシャ・ローナン主演で、スコットランド人作家エイミー・リプトロットの回顧録『The Outrun』を手掛けている。本作は、米映画製作会社MGMがリメイク化権を獲得、チャニング・テイタムが主演とプロデューサーを務め、フィングシャイトも製作総指揮として参加予定。

撮影:ユヌス・ロイ・イメール
Yunus Roy Imer

1987年 スイス、チューリッヒ生まれ。ベルリンを拠点に国際的に活躍する撮影監督。ベルリナーレ・タレンツ 、サラエボ・タレントの卒業生。短編の撮影監督を数作務めた後、2019年に本作の撮影監督を担当する。同年、ロカルノ国際映画祭でプレミア上映され、世界中の映画祭を巡回したドキュメンタリー『SPACE DOGS』(エルザ・クレムザー&レヴィン・ペーター監督)では、ディアゴナーレ国際映画祭で「ドキュメンタリー部門最優秀撮影賞」を受賞。2023年には、シアーシャ・ローナン主演『THE OUTRUN』でノラ・フィングシャイトと再度タックを組んだ。

音楽:ジョン・ギュルトラー
John Gürtler

1981年イギリス、ロンドン生まれ。エンニオ・モリコーネやジョン・バリーをリスペクトし、実験音楽や電子音楽で曲作りを始める。曲を書いて作曲し、ライブで演奏したスタジオが究極の楽器となることを発見し、映画音楽の作曲を始めた。『Above and Below』(15)と『Space Dogs』(19)でミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭最優秀作曲賞を受賞。本作のサウンドトラックで、シュヴェリーン アート・オブ・フィルム フェスティバル、ドイツ映画賞、ヨーロッパ映画アカデミー賞の最優秀作曲賞を受賞した。

cast

ヘレナ・ツェンゲル(バーナデット「ベニー」クラース役)
Helena Zengel

2008年ドイツ、ベルリン生まれ。5歳のときに地元のオルタナティヴ・ロック・バンド「アビー」のミュージック・ビデオで女優デビューした。かんしゃく持ちの9歳の主人公ベニーを演じた本作で2020年ドイツ映画賞主演女優賞を受賞した。ユニバーサル・ピクチャーズ製作、ポール・グリーングラス監督の西部劇『この茫漠たる荒野で』に出演、カナダ系アメリカ人作家のポーレット・ジルズの小説を原作とするこの映画で彼女が演じたのはカイオワ族に育てられた10歳のドイツ人少女ジョハンナ・リオンバーガー。トム・ハンクス演じるジェファーソン・カイル・キッド大尉と共に旅をするという役どころで、第78回ゴールデン・グローブ賞助演女優賞、第27回全米映画俳優組合賞助演女優賞にノミネートされた。ヘレナは、出演が決まるまでトム・ハンクスのことを知らなかったそうで、「ドイツ映画賞を受賞したことは、もちろんとてもうれしかったです。 しかし、これまでのキャリアの中で最も幸せで最高の瞬間は、『この茫漠たる荒野で』で私の役があると聞いたときでした。私は完全に取り乱し、喜びのあまり激しく飛び跳ねていました。」「トム・ハンクスという名前を聞いたとき、彼が有名な俳優であることはわかりました。しかし、私は彼が実際どれほど大きなスターであるかは知りませんでした。バラエティ誌の「注目すべき俳優リスト10人」とハリウッド・レポーター誌の「注目すべきヨーロッパの才能リスト10人」にも選出され、今後の活躍が世界的に期待される。


アルブレヒト・シュッフ(非暴力トレーナー、ミヒャ役)
Albrecht Schuch

1985年ドイツ、イエナ生まれ。ライプツィヒ音楽演劇大学で演技を学び、2011年の『Westwind』で映画デビュー。。2016年『Paula』、2018年『Atlas』を経て、本作での演技が絶賛されドイツ映画賞主演男優賞を受賞。2020年『ベルリン・アレクサンダープラッツ』では同賞助演男優賞を受賞し、同じ授賞式内で主演と助演の2部門を受賞した唯一の俳優となった。2021年には『ディア・トーマス 東西ドイツの狭間で』で再びドイツ映画賞主演男優賞を受賞。続いて『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』(21)、『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』(21)に出演。『西部戦線異状なし』(22)では英国アカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、近年大いに注目を集めている。


リザ・ハーグマイスター(ベニーの母親、ビアンカ・クラース役)
Lisa Hagmeister

1979年ドイツ、西ベルリン生まれ。ベルリン「エルンスト・ブッシュ」演劇芸術アカデミーで演技を学び、舞台を中心に活動。2003年と2004年にヴェルト・アム・ゾンタークの批評家投票でノルトライン・ヴェストファーレン州の最優秀若手女優に選ばれ、ノルトライン・ヴェストファーレン州若手芸術家奨励賞を受賞した。2008年、ハンブルクの舞台で若手俳優に与えられるボーイ・ゴベール賞を受賞する。2018年には舞台版『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のセルマ役でハンブルク・ロルフ・マレス劇場賞を受賞。本作では、優柔不断な母親ビアンカを演じ、ドイツ映画賞初演女優賞にノミネートされた。2011年からパンクバンド「N.R.F.B.」のボーカルも務めている。


ガブリエラ=マリア・シュマイデ(ソーシャルワーカー、バファネ役)
Gabriela Maria Schmeide

1965年ドイツ、バウツェン生まれ。高校卒業後、医学を志すが父親が西側に亡命したため断念。歌手兼ヴァイオリニストを経て、ベルリン「エルンスト・ブッシュ」演劇芸術アカデミーで演技を学ぶ。1992年、シアター・トゥデイ誌で年間最優秀若手女優に選出。2001年、『婦警』で長編映画デビューし、アドルフ・グリンメ金賞を受賞。2002年の『Half Staircase』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞し、本作ではドイツ映画賞助演女優賞を受賞した。その他、映画やテレビで多くの役を演じ、多数の受賞歴を誇るドイツ映画界の演技派。

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